日本人の死因第4位である脳卒中の中で、約65%を占めるのが脳梗塞です。脳梗塞は、脳の血管が狭くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために脳の細胞がダメージを受ける病態です。脳梗塞は詰まる血管の太さやその詰まり方によって、『ラクナ梗塞』、『アテローム血栓症』、『心原性脳塞栓症』の3つのタイプに分けられます。厳密には脳梗塞ではありませんが、脳梗塞の前触れ(警告サイン)だけで、脳梗塞には至らない『一過性脳虚血発作』という状態も、一時的な脳機能障害に含まれます。また5歳前後の小児に脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症する『もやもや病』は進行性に血管が狭くなる病態で、成人になって脳出血やクモ膜下出血で発症することもあります。
共通する主な症状は、
① 片方の手足に力が入らない。
② 片方の半身がしびれたり、感覚が鈍い。
③ ろれつがまわらない。
④ 言葉が出にくい。言葉が理解できない。
⑤ めまいがする。
⑥ 吐き気や嘔吐がある。
⑦ けいれんする。
⑧ 意識がもうろうとする。
⑨ 物が二重に見える。
⑩ 視野が欠ける。
症状やその程度はダメージを受けた脳の部位と範囲によって異なり、MRIで診断します。治療としては、血液をサラサラにする薬や血栓を作りにくくする薬を投与し、再発予防に努めます。
脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞【小梗塞】
脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと枝分かれしていきます。この細い血管が狭くなり、詰まってしまった結果、直径 1.5cm 未満の小さな梗塞が起きた状態をラクナ梗塞といいます。日本人に最も多いタイプの脳梗塞で、高血圧症により細い血管の内側の壁が傷ついて、どんどん硬くもろくなってしまい、動脈硬化を来たすことが原因といわれています。ラクナとは「小さな空洞」という意味です。
脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【中梗塞】
動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓が形成され、血管が詰まるタイプの脳梗塞で、比較的広範囲の梗塞を来たします。動脈硬化を発症・進展させる高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が原因といわれています。
脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【大梗塞】
心臓の中でできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせた結果、広範囲の梗塞を来たしてしまうタイプの脳梗塞です。原因として最も多いのは不整脈の一つである心房細動で、他に心筋梗塞や心臓の弁の病気が原因となることもあります。
脳梗塞の前触れの症状だけで、脳梗塞には至っていない状態のことをいいます。脳梗塞は突然発症して症状が完成してしまいますが、一過性脳虚血発作は一時的に血栓が脳の血管に詰まっても、数分から数時間で血栓が溶け血流が回復するので、症状はほぼ消失し元の状態に戻ります。回復したからといってそのまま放っておくと、30%以上の確率で脳梗塞を発症するといわれていますので、脳梗塞に準じた検査や治療が必要です。